静かな部屋を用意したのに、かえって落ち着かない。そんな経験はないでしょうか。集中を支えるのは無音ではなく、予測できる音に包まれている状態かもしれません。聴覚と注意に関する研究を手がかりに、家庭の音環境の整え方を考えます。
生活のなかで完全な無音が生まれる場面はほとんどありません。ふだん聞こえている冷蔵庫の音や屋外の気配が急に消えると、小さな物音のほうが際立って聞こえます。注意は「変化」に反応するため、静けさそのものよりも、音の変化の大きさが集中を切ってしまうことがあります。
一定の背景音がある環境では、突発的な物音による注意の切り替えが起こりにくいことが複数の研究で報告されています[1]。ただし報告の多くは成人を対象としたもので、年齢による差は検討の途上です。
つまり、音を消す方向ではなく「変化の少ない音に整える」方向で考えるほうが、家庭では現実的です。
同じ音量でも、内容が意味を持つ音(会話やテレビの音声)は、そうでない音(換気扇や雨音)より注意を奪います。言語に関わる音は、聞き流そうとしても処理が始まってしまうためです。
どの程度の音量が最適かは、課題の種類・年齢・その子の感覚特性によって変わります。「◯デシベルが正解」と言える段階ではありません。
音に敏感な子どもにとっては、静けさより「変化しないこと」のほうが助けになる場合があります。
家庭で操作しやすいのは音量よりも「音源の数」です。鳴っているものを一つ減らすだけで、音の変化は目に見えて減ります。
今夜、寝る1時間前に家のなかで鳴っている音を数えてみてください。ひとつ減らすだけで、寝つきは変わることがあります。
nockaは、研究結果を断定的な助言に変換しないことを編集方針としています。記事は最新の知見にあわせて更新します。
子どもの学びと環境の関係を研究。nockaの編集監修を担当。